特集|高校新聞部が問う「見えない貧困」とつながり

エコ贔屓(ひいき)特集 埼玉新聞2023年1月31日掲載

住民の一人して取り組む
埼玉県立越谷北高校新聞部 金子千春さん

1年生が初めて挑むタブロイド判の新聞でした。私たち2年生が新聞づくりを後輩に伝えられる機会と考えて取材に臨みました。記事は、何をどう伝えるかという新聞の核になる部分を2年生が担うことにしました。

私は特集のまとめを担当しました。それぞれの記事には狙いがあって、関連しています。そのつながりから私たちの考えを伝えたいと思いました。

校内アンケートを実施したのは、取材を始める前。私も、当初はアンケートの結果と同じように貧困は「お金がない」という印象でした。

現実との格差に気づいたのは、市役所の取材です。収入や資産があっても困っている人がいる、という話が印象的でした。貧困には様々な要因があって、多様な支援が必要です。私たちも地元住民の一人として、地域の問題に取り組むべきだと思います。

支援のつながりと役割を実感
埼玉県立越谷北高校新聞部 田中沙和さん

特集の冒頭で「貧困に困っている人を目の当たりにしたことがあるだろうか」と問いかけました。貧困は見えにくいけれど、実は身近にあると取材を通して分かりました。その事実を最初に分かってほしいと考えたからです。

以前から関心を持っていたフードバンクの記事などを担当しました。取材時には質問をしっかりと準備しています。今回、最も知りたかったのは、ホームレス支援について。実は、フードバンクが生活困窮者へ食料や物資を直接届けていると思っていました。

現場は思った以上に窮屈で、雑然としていました。寄付された食品などがドーンと積まれている感じで、食品の検品、整理や仕分け、配送などといった役割を担う集配拠点でした。子ども食堂で見た山積みされたお米やレトルト食品。フードバンクの役割と支援のつながりを実感しました。

社会問題を引き寄せたい
埼玉県立越谷北高校新聞部 佐藤稟峨 さん

子ども食堂で出会った高校生ボランティアは、同じ1年生でした。「学校は盲目になりやすい」という言葉に、強く引かれました。学校にいるだけでは「社会問題を身近なものとして捉えにくい」という感覚は、それまでの私にはありませんでした。別の大きな世界観に触れた気がします。

学校以外の学ぶ場は、塾や予備校だと思っていましたが、貧困の連鎖を断つ学習支援に気づけたことが大きな収穫でした。また、大勢がかかわっていることにも驚きました。

実は、入部して初めての外部取材でした。すごく大変でしたが、その分すごく面白い経験でもありました。書くことは、聞いた話をそぎ落とす作業です。結果、「信頼できる先生を見つけて」という言葉を拾い取りました。貧困を伝えるだけでなく、自分に引き寄せる手がかりになると思います。

一人一人の声をしっかり聞く
埼玉県立越谷北高校新聞部 日野水葉さん

先輩や顧問の先生などから助言されて越谷市役所を取材しました。当初、今回の特集は、子ども食堂などの生活困窮者に対する食料支援が中心と受け取っていたので、行政がどう関係するのか戸惑いました。

「見えない貧困」をテーマにすることで、視点がはっきりしました。まずは貧困とは何か。そして、行政や各団体が貧困をどう捉えているのか比較するのも面白いと思いました。

市役所には生活自立相談「よりそい」という窓口があります。相談件数はコロナ禍前と比べて倍以上に増えていました。相談にはきっと勇気が必要でしょう。それほどまでに深刻な状況の人が身近にいることが衝撃でした。

コロナ禍で対面取材ができず、メールのやりとりでしたが、一人一人の声にしっかり耳を傾けようとしている行政の姿勢が印象に残っています。

編集・レイアウトまでを部員が行う。過去の紙面も参考に検討していく
まとめた取材メモを元に考えを深めていく。原稿を互いにチェックして、記事を練る