特集|高校新聞部が問う「見えない貧困」とつながり

エコ贔屓(ひいき)特集 埼玉新聞2023年1月31日掲載

学校新聞の枠を超えて

地域を知る 将来のため

昨年末、待ちに待っていた「越谷北高新聞」第523号を手にした。埼玉県立越谷北高校新聞部が夏から続けてきた取材をまとめた特集は、見開き2ページ。紙面中央に大きな見出しが躍る思い切ったレイアウトが目を引く。

担当したのは、2年生の金子千春さんと田中沙和さん、1年生の佐藤稟峨さんと日野水葉さん。フードバンク、子ども食堂から始まった取材に加え、校内アンケートの結果などを手がかりに議論を深めてきた。越谷市生活福祉課や学習支援を中心に取り組む若者支援団体へも取材を広げた。

見えない——。4人は取材から感じ取っていく。「貧困で困っている人を目の当たりにしたことはあるだろうか」。特集の冒頭で、田中さんは問いかけた。

貧困のイメージについて、校内アンケートでは8割が「お金がない」と答え、子ども食堂の取り組みを9割が知っていた。ただ、子ども食堂の利用者には、その印象を持てなかった。意識と現実に格差がある。「貧困に関する理解はあるものの身近に感じた経験は少ないのかもしれない」と、田中さんは言葉を紡いだ。

「学校は盲目になりやすい」。佐藤さんは、取材で出会った高校生ボランティアの言葉を記事にした。「同じ制服を着て同じように授業を受けていて、社会問題を身近なものとして捉えにくい」。子ども食堂に参加する思いを知り、広い視野に衝撃を受けた。見えていなかった、とも気づいた。もっと地域を知りたい。社会課題の解決に向けて、高校生には「自分で考え行動する力があるはず」という言葉に共感した。

「収入・資産はあるけれども困っている方も多くいる」。越谷市の取材を担当した日野さんは、中間層と低所得層の間の年収がある「準貧困層」の存在と、抱える課題に気づく。内閣府の調査では、困りごとや悩みを「誰にも相談できない、しない」と答えたのは全体で8・9%。ひとり親世帯では15%以上だった。社会的孤立を防ぎ、支え合う社会をつくるために大切なものは何か。

つながり——。4人は見出しにふさわしいと選んだ。「地元を思いそこに住む人々と触れ合うことは机上の勉強以上に将来のためとなるだろう」。特集のまとめ記事に、金子さんは思いをつづった。見えないものに目を背けず「地元の課題を自分ごとに」という主張は、学校新聞の枠を超えて投げかけられている。

彩の国子ども・若者支援ネットワーク(さいたま市浦和区)を取材。学びと貧困を考える手がかりになった