特集|加須カレーが見据える 真の地産地消の先

エコ贔屓(ひいき)特集 埼玉新聞2022年12月21日掲載

「おいしい」で終わらないつながり
加須市の稲作農家 角田大輔 さん

農家に生まれて、家族からは「農業はやるもんじゃない」と言われて育ちました。農業はきついし、儲からないから。家業を手伝いはしても、本業にしようと思いませんでした。

専業農家を決意したのは、ある出会いがあったからです。

今、若手就農者の集まり「ヤング農マンKAZO」の3代目会長を務めています。農業に対する彼らの思いは、私とは正反対。すごくキラキラしていました。口にするのは、これからはああしよう、こうしようという話題ばかりで、本当にすごかった。農業に誇りを持っているのは当たり前、彼らは未来に可能性を見出していました。

研修などを経て独立して2年。子どもたちに農業の魅力を伝えたいと思っています。将来、職業選択の一つに農業を加えてもらえたらうれしいと考えるようになりました。

そのためには、まず農業に目を向けてもらうこと。農業って面白そう。あの人、何やってるんだろう。どんなことでもいいから、まずはきっかけをつくりたい。始めたのは超濃い目のキャラを生かした、とにかく目立つパフォーマンスです。「写真集を出せ」と仲間から言われています。

顔見知りの飲食店にコメを卸しています。「大ちゃんのコメ、評判がいいよ。おいしいよ」。最高にうれしい言葉です。売れたからではなく、おいしく料理してもらえたことがうれしいんです。生産者にとって「おいしい」は最高です。

ただ、そこで終わりにしてはいけないとも思っています。自分が育てたコメの味には自信があります。それに加えて、この強烈なキャラを知ってもらうことを大切にしたい。信頼につながると考えるからです。互いの顔が分かる関係、生産者と消費者のつながりがなければ、ほかの産地や生産者の中にきっと埋もれてしまうでしょう。

加須カレー研究会の取り組みには大いに興味があります。将来は、香り豚の餌になるコメも作ってみたい。おいしく食べる人の耳元で、そっとささやいてみたいものです。

「その肉のおいしさには、うちのコメも入っているんだよ」

研究会オリジナルブレンドのスパイス(加須カレー研究会フェイスブック)