特集|加須カレーが見据える 真の地産地消の先

エコ贔屓(ひいき)特集 埼玉新聞2022年12月21日掲載

地産地消の完成形を目指したい
養豚家/松村牧場専務取締役 松村 淳さん

サラリーマン家庭に育ち、結婚を機に就農しました。それまではコメも野菜も、豚肉も買うものだと思っていました。養豚農家に婿入りして、初めて食に関心を持ちました。

養豚業は、豚を育てて出荷するまでが仕事。自分の豚がどこで売られ、誰に買っていただいているのか分かりません。消費者とつながりたい。仲間をつくりたい。地域に貢献したい。そんな思いから、ブランド肉「香り豚」を夫婦で始めました。

ブランドを知ってもらうのは一筋縄ではなかなか。生産者自らが汗をかかないと難しいものです。昼休みや仕事を終えた後、飲食店を回って注文を取り、肉を届ける。自分の豚をわざわざ問屋さんから買い戻してです。それが肉の流通の仕組みでした。

加須カレー研究会と出会ったのは、その頃です。いろんな人とのつながりが生まれて、紹介が紹介を呼び広がっていきました。研究会は有志が集まる場です。地域の「損得ではないつながり」という力に助けられました。

「あっ、香り豚の人ですか」。地域の人からかけていただく声は、私にとって最高の言葉です。ブランド農産物は全国にたくさんありますが、機能していない事例も多いと聞きます。生産者と消費者、産地と消費地といった人のつながりを生み出すことが、地産地消を地域活性化につなげる課題だとつくづく思います。

豚のフンのたい肥化を始めて、仲間の農家で使ってもらっています。将来は、そのたい肥で育てた加須産米を豚の餌に使いたいと考えています。飼料米はすでにありますが、ゆくゆくは人が食べる主食米を使って、ブランド力を上げたいと思っています。

たい肥を使うことでおいしいコメが育ち、収量も上がる。そのコメでおいしい豚を育て、フンをたい肥にして再びおいしいコメを育てる。飼料までを地元産で賄う農業の循環が、真の地産地消につながると思います。

ただ、課題もあります。コメを餌にするために必要な加熱処理の技術を研究中です。実践例はすでにあるので、加須でできないわけはない。地産地消の完成形を目指します。

カレーパンなどのバリエーションもある(加須カレー研究会フェイスブック)