特集|食品リサイクルループ 加速する手がかり

エコ贔屓(ひいき)特集 埼玉新聞2022年9月15日掲載

リサイクル起点に循環型地産地消を 矢島

矢島 弊社は産業廃棄物処理業で、とりわけリサイクルにこだわっています。食品残さを飼料化・肥料化し、それらを使って養豚や長ネギなどを生産しています。さらに、農産物は運営する道の駅「かぞわたらせ」で加工販売するなど、目指すのはリサイクルを起点とした「7次産業化」。周辺地域の中で循環する仕組みです。

飼料や肥料の価格高騰が農家を直撃しています。農業を手掛けるのは、低価格で高品質な飼料や肥料をつくるための実践的な試験です。いずれは販売につなげて、近隣農家を支援したいという思いがあります。

ただし、一般家庭やレストランなどの事業系の生ごみにプラスチックや紙ごみなどの異物が混入していると選別の手間がかかり、飼料の原料とする場合には鮮度も重要です。飼料や肥料の品質や価格を大きく左右するので、これらの課題をクリアすることも非常に大事です。

角田 例えばスイカの皮は「燃やすごみ」ですが、水分が多いため焼却にはより経費が掛かり、たい肥化が向いています。そこで、生ごみ処理容器の購入費用を補助するなど、市民の取り組みを支援しています。

できたたい肥を集めて必要な人へ配布すれば循環の輪はさらに広がるでしょう。今後の課題です。

市の面積の約半分は農地で、その85%が水田です。加須はコメのまちですが、国は水田転作を進めている。そうした中で、市内の若手農家が意欲的な挑戦を始めました。水田で飼料用トウモロコシを栽培。市内の養豚農家に餌として利用してもらおうという「飼料の地産地消」を目指しています。

これに、食品残さをリサイクルした飼料を配合したらどうでしょう。考えると、リサイクルの可能性はますます広がりそうです。

資源循環から生まれる
本当の「地産地消」

矢島 それが、弊社が目指す資源循環の流れです。地場の農家が加須産の飼料や肥料で農畜産物を育てる。それを地域のお店が販売して、地域で消費する。排出された食品残さは、地域の処理業者が再び飼料や肥料に。こうしたリサイクルループの仕組みが理想だと考えています。

特に食品残さは傷みが早く、腐敗すれば臭いも出ます。いかに素早く集めるかが飼料化の課題。分別や選別と同様に廃棄の仕方も重要です。

角田 自宅のごみ出しは、私の役割です。きちんと洗えば「資源ごみ」に出せる、と妻に時々しかられます。ごみと資源の分かれ目は、私たちの廃棄の仕方にあります。

資源であれば売れます。ただ、例えばペットボトルには品質に応じたランクがあって買い取り価格に差がある。加須市のものには高値がつくとか。取り組みの成果だと思います。

ごみを資源として再利用する循環。その輪をつなぐために、私たちには廃棄の仕方や廃棄後にまで意識を広げる責任があると感じます。

食品リサイクルループを実現する
ウム・ヴェルト株式会社

廃棄物リサイクル業。本社・加須市栄。ウム・ヴェルトはドイツ語で「環境」の意味。農業法人を設立して農業や養豚を始めるなど、6次産業と食品リサイクルを組み合わせた「7次産業化」を進める。2020年、第7回「食品産業もったいない大賞」農林水産省食料産業局長賞受賞。2021年、「彩の国埼玉環境大賞」事業者部門大賞受賞。2022年、創業30周年を迎えた。