特集|地域の「らしさ」を100年後へ残したい

エコ贔屓(ひいき)特集『みらいものさし』 埼玉新聞2023年2月28日掲載

地縁団体の懐の深さこそカギ
淑徳大学教授・地域創生学部開設準備室 矢尾板俊平 さん

地縁に基づいて構成される自治会や町内会などは「地縁団体」と呼ばれます。ごみ集積場や街灯の管理、防災活動や災害時の助け合いなど、地域社会を支える核としての役割を担ってきました。しかし、加入者の減少に加え、役員の高齢化による担い手不足などから、これまでの活動が続けられず、運営は曲がり角を迎えています。

こうした地域課題に千葉市と共に取り組んでいます。同市の自治会加入率は令和3年度で62・3%。この10年間で8・6ポイント減少しました。

こうした事態に、地域の良好な環境や価値を維持・向上させるエリアマネジメントに積極的な事業者が増えています。また、行政と地域の間に立って様々な課題の解決を支援する「中間支援組織」も注目されています。ただ、これらは新しい住宅地のエリアマネジメントとしての期待です。

では、その地域で従来から暮らしている住民と新住民とをどうつなげればいいのでしょうか。

もちろん、地縁団体の皆さんにも意識改革が必要です。住民が生活する上で自治会に入ることが義務であるかのように押し付ければ、閉鎖的と映るでしょう。ただ、私は地縁団体の懐の深さに注目しています。

地域活動に消極的な人でも、実は関心のあるテーマなら参加するという人は少なくありません。こうした人たちを、子どもやお祭りなどといった多様な接点をつくって巻き込んでいく。地縁団体だからこそ、地域の魅力や連帯する楽しさを共有するきっかけを提供できると期待しています。

まず公共の場を作ってはどうでしょう。私たちは「公共とは行政」と理解しがちですが、コモンズ(地域で共有する場)に近い考え方です。例えば、住民が地域の寄合所を会場に定期的に居酒屋を開き、若い世帯の加入を増やしているという事例もあります。

大切なのは楽しいこと、面白いことを提案するセンスです。地域のリーダー、例えば地縁団体のけん引役である大地主さんなどの役割も大きいと思います。ご近所付き合いが希薄になっているからこそ、心を開いて交流を深め、相互理解を進める努力が必要です。

※淑徳淑徳大学は2023年4月、地域創生学部を開設。矢尾板俊平教授が学部長に就任されました。