話題を聞き解く|見直される「論語」の魅力

「論語は、私たちに善く生きる道を示してくれる」。論語の世界へ導く案内人らしい言葉だ。埼玉県嵐山町の安岡正篤記念館で(写真・埼玉新聞社)

※この記事は、公益社団法人浦和法人会の会報第241号(2021年1月1日発行)に掲載されたものです。
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コロナ時代の経営に生きる孔子の言葉
道徳評論家 安岡定子さん

埼玉県深谷市出身の実業家・渋沢栄一が主人公のNHK大河ドラマ『青天を衝(つ)け』が、いよいよスタートする。放送開始は2月14日予定(毎週日曜午後8時、総合ほか)。

渋沢は血洗島村(現深谷市)の農民の家に生まれ、幕臣や新政府の官僚を経て実業家として活躍した。近代日本のあるべき姿を追い続け、約500の企業を育て、約600の社会公共事業に関わった「日本資本主義の父」。2024年度をめどに刷新される1万円札の顔になることが決まっている。

ドラマは、晩年は民間外交にも力を注ぎ、ノーベル平和賞の候補に2度も挙がった渋沢の生涯と、幕末から明治にかけた激動の時代を描く。渋沢役を演じるのは、俳優の吉沢亮さん。特撮ドラマ「仮面ライダーフォーゼ」シリーズで注目され、映画「リバーズ・エッジ」で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した若手の実力派だ。NHK朝の連続テレビ小説「なつぞら」ではヒロインの幼なじみ、山田天陽を演じた。

実業家・渋沢の「道徳と経済」の考えた方は現代にも通じる。1916(大正5)年に刊行された『論語と算盤(そろばん)』は渋沢の口述書で、今もなお多くの経営者や起業家に読み継がれ、影響を与えている。

今、論語が人気だ。渋沢が大河ドラマの主人公に決まると、論語に注目が集まり解説本の売れ行きが好調だという。ウィズ・コロナがいわれ、先行きが見通せない時代。もう一度古典に立ち返り、生き方や教育方法を見つめ直したいと考える人が増えているようだ。

論語は約2500年前、孔子の言葉や弟子との問答などを、弟子たちがまとめた書物。日本には5世紀前後に入ってきたとされ、江戸時代には寺子屋で盛んに教えられた。

新型コロナウイルス感染症の流行が収まらない中、感染拡大を抑えながら、経済をどう守るのか。予断を許さない状況に、これまでの価値観が揺らいでいる。指針を見失う中で、論語を含めた古典の価値に注目し、社員向けの研修などに採り入れる企業が増えているという。

企業が、日本の古典的な考え方に回帰するのはなぜなのだろう。多くの経営者が、渋沢が『論語と算盤』の中で説いた「道徳の経済」の考えに、なぜ引き寄せられるのだろう。

企業の社員研修や経営セミナー、子ども論語教室などで講師を務める安岡定子さんは、私たちを「論語の世界へ導く案内人」だ。論語の難しい解釈を、ビジネスや人生の様々な局面に応用する手がかりを分かりやすく伝える。論語の魅力を安岡さんに聞き解こう。