再考『八ツ場ダム』 松浦茂樹・東洋大教授に聞く【3】

利根川中流の利根大堰で取水した水は武蔵水路、荒川を経由して東京、埼玉へ(埼玉県行田市)

治水や利水の計画に基づいて進められてきた八ッ場ダム。それらの計画を検証することで、ダム問題を考える手がかりを掴むことができそうだ。「計画は高度経済成長時代のもの。全面的な見直しが必要」と指摘する松浦茂樹東洋大学教授。人々は暮らしを支える水を安定的に確保するために古くからしのぎを削って来た。利水をめぐって複雑な仕組みが出来上がったのはそのためだろう。まずは、利水からダム問題を考えるために必要なポイントを聞いた。 (編集部・阿久戸嘉彦)

※この記事は、月刊RIVER LIFE(2010年1月号)に掲載したものです。

八ツ場ダムから利水問題を考える

ダムは、一定の考え方に基づいて策定された「計画」に沿って建設されます。前号では、ダム問題を治水対策から考える手がかりを語りました。特に、八ツ場ダムが計画されている利根川流域について、その根本である治水計画を見直す必要性を指摘しました。

水の問題をめぐっては、根本となる計画が今の時代に合っているのか、これからの時代を適切に見通しているのかかが政権交代をきっかけに問われているのだと思います。ダム問題を考える時、治水と並んで重要なのが利水です。今号からは、利水の面からダム問題を考えていきましょう。

水は我々の暮らし、農業や工業などの源であり、生命そのものを支える重要な「資源」です。人々は古くからその確保にしのぎを削って来ました。それは近代以降も変わっておらず、多くの都道府県や市町村が長年、安定的な水資源を求めてきました。

例えば、1893(明治26)年、東京府は玉川上水の水源地を自らのものにするため、神奈川県だった三多摩地域を移管しています。現代でも市町村合併の駆け引きに使われるなど、水資源の確保はきれいごとでは済まない重要な課題なのです。

蛇口をひねれば、いつでも水は出る?水はどこからくるだろう